| <メッセージ> |
| ●不安 |
| 私達は不安で不安でたまらなくなることがあります。 |
| 何とか不安を取り除きたいと思って、考え方を変えてみようとするのですが、 |
| うまくいきません。 |
| 様々な手立てを講じてみても不安は消え去りません。 |
| 不安は不安を呼んで、ますますふくれあがっていくのです。 |
| そういう時は、祈ることです。 |
| 祈りの格闘をするのです。 |
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| ●ヤコブの不安 |
| ヤコブは不安で不安でたまりませんでした。 |
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| 今20年ぶりに故郷に帰ろうとしているのです。 |
| 20年前、ヤコブは父イサクをだまして兄エサウが受けるはずの神様の祝福を |
| 奪いとったのでした。 |
| 兄エサウは怒ってヤコブを殺そうと考えました。 |
| それでヤコブは父の家を逃げ出し、伯父ラバンのもとで20年を過ごしたので |
| した。 |
| ところがラバンとも仲違いしラバンのもとを逃げ出してきたのです。 |
| 行き先は故郷しかありません。 |
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| しかし故郷に近づくにつれて、ヤコブの心は不安でいっぱいになっていったの |
| です。 |
| 20年前のことがはっきりと思い出されてきました。 |
| 自分が父と兄にしたひどい仕打ちと、兄の怒った顔が浮かんできます。 |
| 何とひどいことをしてしまったのか、兄が怒るのもあたりまえだと、今になって |
| は思うのです。 |
| 兄は今も怒っているだろうか、帰って行ったらひどい目に遭うのではないか、と |
| 不安で一杯です。 |
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| ●決着を付ける |
| けれど、兄と会うのを避けていることは、もはや出来ません。 |
| 20年前にヤコブがしたことがすべての始まりなのです。 |
| どうしても20年前の出来事に決着をつけなければなりません。 |
| そうしなければヤコブの生きる道はないのです。 |
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| ●使いを遣わす |
| そこでヤコブは考えました。 あらかじめ使いの者を遣わすことにしたのです。 |
| 使いの者に |
| 「あなたの僕ヤコブはこう申しております。わたしはラバンのもとに滞在し今日 |
| に至りましたが、牛、ろば、羊、男女の奴隷を所有するようになりました。 |
| そこで、使いの者を御主人様のもとに送って御報告し、御機嫌をお伺いいたし |
| ます。」 |
| と言わせました。 |
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| 帰ってきた使いは言いました。 |
| 「兄上様の方でも、あなたを迎えるため、四百人のお供を連れてこちらへおい |
| でになる途中でございます」 |
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| ●策を講じる |
| 400人も連れてくるというのは、戦うためではないか。 |
| 兄さんはまだ怒っていて、自分や家族を殺そうとしてるのだろうか。 |
| ヤコブは非常に恐れ、思い悩みました。 |
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| そこで彼は、連れている人々や家畜を二つの組に分けました。 |
| 一方の組に攻撃が仕掛けられても、残りの組は助かると思ったからです。 |
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| 知恵を絞り万全の態勢を講じるヤコブです。 |
| けれどもヤコブの不安は消えませんでした。 |
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| ●ヤコブの祈り |
| ヤコブは祈りました。 |
| 10節です。 |
| 「わたしの父アブラハムの神、わたしの父イサクの神、主よ、あなたはわたしに |
| こう言われました。『あなたは生まれ故郷に帰りなさい。わたしはあなたに幸い |
| を与える』と。 |
| 32:11 わたしは、あなたが僕に示してくださったすべての慈しみとまことを受け |
| るに足りない者です。かつてわたしは、一本の杖を頼りにこのヨルダン川を |
| 渡りましたが、今は二組の陣営を持つまでになりました。 |
| 32:12 どうか、兄エサウの手から救ってください。わたしは兄が恐ろしいので |
| す。兄は攻めて来て、わたしをはじめ母も子供も殺すかもしれません。 |
| 32:13 あなたは、かつてこう言われました。『わたしは必ずあなたに幸い を与 |
| え、あなたの子孫を海辺の砂のように数えきれないほど多くする』 と。」 |
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| ●私達も祈る |
| 私達はこの祈りを幾たびしてきたことでしょうか。 |
| 「神様、恐ろしいです。助けてください。救ってください」と祈ってきたのでした。 |
| これまでに神様がしてくださったことを全部思い出し、御言葉をありったけ思 |
| い出して、何とか恐れや不安を取り除こうとします。 |
| でも恐れは消えないのです。 |
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| ●贈り物作戦 |
| ヤコブの恐れは消えませんでした。 |
| ヤコブはなおも手立てを考えます。 |
| 贈り物作戦です。 |
| 贈り物を先に行かせて兄をなだめ、その後で顔を合わせれば、快く迎えてくれる |
| のではないかと考えたのでした。 |
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| それでもヤコブの恐れと不安は消えませんでした。 |
| エサウは今も怒っているかもしれないが、エサウは怒っているに違いない、に |
| 変わっていきます。 |
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| ●祈りの格闘 |
| 人々も持ち物も全部川を渡らせた後、ヤコブはひとり後に残りました。 |
| エサウと会うためにはどうしても乗り越えなければならないものがあったの |
| です。 |
| それを乗り越えなければ川を渡ることが出来ません。 |
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| 考え得るあらゆる手を打ってもなお不安が消えないこの夜、ヤコブは祈りの |
| 格闘をします。 |
| 「そのとき、何者かが夜明けまでヤコブと格闘した。 |
| と聖書は記しています。 |
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| はじめはヤコブにはその者が誰であるかわかりませんでした。 |
| けれども祈りの格闘をしているうちに、そのお方が神様であるとことがわかり |
| ました。 |
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| 神様は来てくださいました。 ぬぐおうとしてもぬぐおうとしても取り去ること |
| が 出来ない恐れと不安に取りつかれているヤコブと神様が格闘します。 |
| けれどもヤコブの恐れと不安はとても強かったので、神様に打ち負かされ |
| る事がなかったのです。 |
| 自分自身を神様にゆだねることが出来ませんでした。 |
| これから起こることを神様に明け渡して平安を得ることが出来ませんでした。 |
| |
| 一晩中格闘して、ヤコブはもう戦えないほどに疲れ切りました。 |
| 腿の関節がはずれたとありますが、肉体的にもう祈りの格闘が出来なくなっ |
| て しまったのです。 |
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| 神様は立ち去ろうとします。 |
| しかしヤコブは何としても神様の平安がほしかったのです。 |
| 「祝福してくださるまでは離しません。」 |
| と神様にしがみつきます。 |
| |
| ●神の祝福 |
| 祝福を求めるヤコブに神様は |
| 「お前の名はもうヤコブではなく、これからはイスラエルと呼ばれる。お前は |
| 神と人と闘って勝ったからだ。」 |
| と言われ、ヤコブをその場で祝福してくださいました。 |
|
| ヤコブという名前はもともとは「神が守ってくださるように」という意味ですが、 |
| ヤコブ物語では「押しのける者」という意味になっています。 |
| その名の通り、ヤコブは兄エサウを押しのけて神様の祝福を奪い取ったので た。 |
| |
| 今ヤコブは神様からイスラエルという名前をいただきました。 |
| イスラエルはもともとは「神は争った」「神が争われるように」という意味ですが、 |
| 一般的には「神と戦う」という意味になっています。 |
| |
| 名前の通り、これまでのヤコブは自分の考えや力で、他人を押しのけて生きて |
| きたのです。 |
| 神様に対してもそうでした。 |
| 人を押しのけて自分が神様の祝福を受けようとしたのです。 |
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| しかしヤコブは自分に破れ果てました。 |
| 今はヤコブは神様が祝福を与えてくださることを願うのです。 |
| 自分を神様に明け渡します。 |
| |
| そのヤコブを神様は祝福してくださいました。 |
| 自分の力で奪い取ったのではない、直接神様から祝福をいただくことが出来た |
| のです。 |
| ヤコブは神様が自分の罪を赦してくださったことを知りました。 |
| ヤコブからイスラエルへ、彼はやっと神様の祝福を受け継ぐ者にされたのです。 |
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| ●朝 |
| 太陽が昇りました。 |
| 暗闇は去りました。 |
| ヤコブの新しい歩みが始まります。 |
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| 恐れていたエサウが400人の者を連れてヤコブの前に現われました。 |
| ヤコブは妻達や子供達の先頭に立ちます。 |
| すると何ということでしょうか、エサウは走って来てヤコブを迎え、抱き締め、 |
| 首を抱えて口づけし、泣いたのでした。 |
| |
| ヤコブは自分が赦されたことを知りました。 |
| 安堵感が心に広がりました。 |
| 氷が日の光で溶けていくようです。 |
| 冷え切っていた心が温かくなりました。 |
| ヤコブも共に泣きました。 |
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| ●神の顔のよう |
| ヤコブは言います |
| 「兄上のお顔は、わたしには神の御顔のように見えます。このわたしを温かく |
| 迎えてくださったのですから。」 |
| あんなにひどいことをした自分をお兄さんは赦してくれた、この実際に起こっ |
| た出来事を通して、ヤコブは、神様がヤコブを赦してくださったことを確かに |
| 知ったのでした。 |
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| ●体験 |
| 皆さんも誰かに赦してもらった体験を持っておられるでしょう。 |
| 取り返しのつかないことをしてしまって、やり直せない、償うことも出来ない、 |
| どうすることも出来ない、その時「赦してあげるよ」と言われたら、本当に救われ |
| ます。 |
| ありがたくて感謝がわき上がってきます。 |
| 「もう2度とこんな事をするんじゃないよ」と言われて、もう2度と同じ過ちを犯 し |
| ません。 |
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| ●神の赦し |
| 人に赦してもらってもこんなにうれしいのですから、まして神様に赦していた |
| だいたら、どんなにうれしいことでしょうか。 |
| 救われることでしょうか。 |
| 神様は赦してくださいます。 |
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| 私たちは神様に対して罪を犯しているのです。 |
| 罪とは、神様に向かわずに、自分勝手に生きることです。 |
| 自分の考えや力や才覚で生きていくことです。 |
| これまでのヤコブの生き方です。 |
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| 私達はそれが罪であるということになかなか気付きません。 |
| 自分で考え自分の力で一生懸命に生きている、立派なことではないかと思 |
| います。 |
| 自分は正しく生きて来た、赦される必要は全くない、と思います。 |
| でも本当は恐れと不安で一杯なのです。 |
| 神様に背く罪を犯していることに気付いたとき、神様はその罪を赦してくださ |
| っていることを知ります。 |
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| ヤコブはエサウに赦してもらったことを通して、神様が自分を赦してくださった |
| 事を知りました。 |
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| ●赦すとは |
| 赦すということは、相手が自分に与えた損失を自分が引き受けるということで |
| す。 |
| その人のしたことによって受けた痛み、悲しみ、苦しみを、自ら引き受けると |
| いうことです。 |
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| 神様は私達を赦して下さいました。 |
| 神様は私達すべての人間を赦すために、最も大切なひとり子イエス・キリスト |
| を贖いとされました。 |
| キリストは神であられます。 |
| 神ご自身が犠牲を払ってくださったのです。 |
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| ●祈りの格闘 |
| ですから、苦しい時、不安でたまらない時、私達も祈りの格闘をしていきたいと |
| 思います。 |
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| 祈っても聴かれないとあきらめてしまわずに、格闘するほどに神様に求めて |
| いきたいと思います。 |
| 私達が格闘する相手は、御子イエス・キリストをくださった神様です。 |
| ついには神様は救いを与えてくださいます。 |
| 恐れと不安は消え去り、赦された安心の中で生きることができるのです。 |
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| ●結語 |
| 神様から祝福をいただいて、私たちは生きていきます。 |
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