| <メッセージ> |
| ●私達の思い |
| 「めいめいが少しずつ食べるためにも、二百デナリオン分のパンでは足りない |
| でしょう」 |
| 『私達にはそんなお金はない。 |
| どうすることも出来ない。』 |
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| 「ここに大麦のパン五つと魚二匹とを持っている少年がいます。けれども、こん |
| なに大勢の人では、何の役にも立たないでしょう。」 |
| 『これだけあるけれど、これっぽっちでは何の役にも立たない。』 |
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| 実際私達が思っていることです。 |
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| そう思っている私達に、聖書は告げます。 |
| 「イエスはパンを取り、感謝の祈りを唱えてから、座っている人々に分け与えら |
| れた。」 |
| 「人々が満腹した」 |
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| ●あの日の出来事 |
| 2000年前のあの日、イエス様の後を追って大勢の群衆が集まってきていま |
| した。 |
| その数男だけで5千人、女の人や子供を加えればもっともっと大勢です。 |
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| イエス様がフィリポに言われます。 |
| 「この人たちに食べさせるには、どこでパンを買えばよいだろうか。」 |
| フィリポは頭の回転が速い人のようです。 |
| すぐに計算します。 |
| 一人分200円として、7〜8千人は居そうだ。 |
| 200×8千で160万円! |
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| 「めいめいが少しずつ食べるためにも、二百デナリオン分のパンでは足りない |
| でしょう」 |
| と彼は言います。 |
| 1デナリオンは労働者の1日分の賃金です。 |
| 二百デナリオンは200日も働いてやっと稼げる金額です。 |
| 一日8000円として200日働いて160万円。 |
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| そんなお金がイエス様や弟子達にあるはずがありません。 |
| 「イエス様、この人達にパンをあげることなど出来るわけがありません。 |
| そんなこと考えないでください」 |
| と言っているのです。 |
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| ●アンデレ |
| イエス様とフィリポのやりとりを聞いていたアンデレが口を挟みます。 |
| 「ここに大麦のパン五つと魚二匹とを持っている少年がいます。けれども、こん |
| なに大勢の人では、何の役にも立たないでしょう。」 |
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| アンデレは現実をしっかりと把握して物事を判断する人のようです。 |
| 現に、今ここに大麦のパン五つと魚二匹がある、 |
| 「でも、これっぽっちでは何の役にも立ちませんねー」 |
| 現実を見て、だめだ、と悲観しています。 |
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| ●イエス様がなされる |
| けれどイエス様は考えを変えることをなさいません。 |
| 悲観なさいません。 |
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| イエス様は、 |
| 「人々を座らせなさい」 |
| と言われました。 |
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| イエス様はパンを取り、感謝の祈りを唱えてから、座っている人々に分け与え |
| られました。 |
| 魚も同じようにして、欲しいだけ分け与えられました。 |
| 人々は皆おなかいっぱい食べました。 |
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| 人には考えられないことです。 人には出来ないことです。 |
| でも、イエス様はしてくださいました。 |
| |
| ●弟子達に焦点 |
| この出来事は、4つの福音書全部に記されています。 |
| その中で、ヨハネによる福音書は特に弟子達に焦点を当てています。 |
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| イエス様がフィリポに、 |
| 「この人たちに食べさせるには、どこでパンを買えばよいだろうか」と言われた |
| のは、フィリポを試みるためであったというのです。 |
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| 「試みる」という言葉は、「疑わしいから試してみる」というような嫌な響きを持っ |
| た言葉です。 |
| 人から試みられていると感じると嫌な気持ちがします。 |
| でもここではそうではありません。 |
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| 今、イエス様の目はフィリポだけに向けられているのです。 |
| 5千人以上の人達が居る中でフィリポだけを見ておられる。 |
| フィリポを見つめて「この人たちに食べさせるには、どこでパンを買えばよいだ |
| ろうか」 |
| と言われる。 |
| 一人にしっかりと向き合われるイエス様です。 |
| 真剣に問われるイエス様のまなざしは、フィリポへの愛と信頼に満ちています。 |
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| ●私達にも |
| イエス様は私達一人ひとりに、フィリポにされたようにしてくださいます。 |
| ほかに何人居ようとも、ひとりわたしに向かって問うてくださるのです。 |
| うれしくて心が震えます。 |
| 試してくださるのはイエス様の愛なのです。 |
| 信頼なのです。 |
| わたしを大切に思っていてくださるのです。 |
| |
| ●私達は |
| イエス様の問いに、私達はどのように答えるでしょうか。 |
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| 私達は、イエス様の問いかけに答えようと、色々に考えます。 |
| でもわたしの答えは、 |
| 「めいめいが少しずつ食べるためにも、二百デナリオン分のパンでは足りない |
| でしょう」 |
| なのです。 |
| 「どうすることも出来ません、イエス様の言われることは無理です」なのです。 |
| 悲しいです。 |
| 情けないです。 |
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| ●アンデレのよう |
| もう一人の弟子アンデレは言います。 |
| 「ここに大麦のパン五つと魚二匹とを持っている少年がいます。けれども、こん |
| なに大勢の人では、何の役にも立たないでしょう。」 |
|
| アンデレもイエス様の問いかけを聞いて、何とかしようとしたのでしょう。 |
| 人々の間に入っていって、お弁当を持ってきている人がどれくらいいるか調べ |
| たのでしょう。 |
| でもその結果は思わしくありませんでした。 |
| アンデレが知ったのは、大麦のパン五つと魚二匹とを持っている少年がいるこ |
| とだけでした。 |
| こんなに大勢の人では、何の役にも立たない、と思います。 |
|
| 私達もアンデレと同じです。 |
| イエス様が言われることに応えたいです。 |
| 一生懸命努力します。 |
| 何とかかき集めようとします。 |
| でもたったこれだけ。 |
| これっぽっちでは何の役にもたたない、とがっかりしてあきらめてしまいます。 |
| 「私達には無理です」とイエス様に言うのです。 |
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| ●イエス様がされる |
| けれどイエス様は違います。 |
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| 私達が何の役にも立たないと捨て置いたものを、イエス様は手に取られるの |
| です。 |
|
| 「これをわたしにくれるの?」 |
| と身をかがめて少年からパンと魚を受け取るイエス様の嬉しそうな顔が見え |
| ます。 |
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| イエス様はパンを取り、感謝の祈りを唱えられました。 |
| それから、座っている人々に手ずからパンを分け与えられました。 |
| 魚も同じようにして、欲しいだけ分け与えられました。 |
|
| その間弟子達はイエス様のなさることを、びっくりして見ているだけでした。 |
|
| ●弟子達にも |
| イエス様は、 |
| 「二百デナリオン分のパンでは足りないでしょう」 |
| と言った者にも |
| 「何の役にも立たないでしょう。」 |
| と言った者にも、 |
| 「さあ、たくさん食べて」とパンを差し出されます。 |
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| イエス様は彼らをひとつも、とがめたり、責めたりなさらないのです。 |
|
| 弟子達は、イエス様のくださるパンをほおばりながら、熱いものがこみ上げてく |
| るのを感じたでしょう。 |
| 「ああ、わたしはなんて不信仰なんだ。 |
| イエス様に問われた時、即座に計算はしたけれど、イエス様のことは頭に無か |
| った」 |
| 「何とかしよう探し回ったけれど、イエス様のことはこれぽっちも思い出さなかっ |
| た。」 |
| 「わたしは、自分で何とかしなければと思っていた。 |
| イエス様に期待しないわたしなんだ。」 |
|
| 弟子達は、自分はイエス様を信じている、イエス様に従っている、と思っていた |
| のでした。 |
| イエス様の弟子であることで、自分が偉くなったような気になっていたのでした。 |
|
|
| 何という思い違い。 |
| 自分の中にある本当の自分を知った瞬間でした。 |
| 試みられたからこそ知ることが出来た自分です。 |
| 試みられて自分で取り組んでみて、初めてわかったイエス様の業の大きさです。 |
| |
| ●弟子達の務め |
| 惨めな弟子達です。 |
| けれどもイエス様はその弟子達をなおも使ってくださるのです。 |
|
| イエス様は、12人の弟子達に一つずつかごを渡してくださいました。 |
| そして |
| 「少しも無駄にならないように、残ったパンの屑を集めなさい」と言ってくださっ |
| たのです。 |
|
| 12のかごはパンくずで一杯になりました。 |
|
| パンの入ったかごを自分の胸にしっかり抱えた時、弟子達は、今起こっている |
| 出来事は確かなことなんだ、とわかりました。 |
|
| これがあの日起こったことです。 |
| 私達にも起こる事柄です。 |
|
| ●しるし |
| この出来事はしるしです。 |
|
| けさ招詞で聞きました。 |
| イエス様は言われます。 |
| 「わたしが命のパンである。わたしのもとに来る者は決して飢えることがなく、 |
| わたしを信じる者は決して渇くことがない。」 |
|
| その日その場にいたフィリポやアンデレ、ほかの弟子達はただただびっくりす |
| るだけだったでしょう。 |
| 何が何だか、かわからなかったでしょう。 |
|
| けれど、イエス様の十字架の出来事を経て彼らは悟ったのでした。 |
| あの出来事は、十字架でイエス様が肉ひき裂かれることによって、全ての人達 |
| が命を得ることをあらわすしるしだった。 |
| あの時裂かれたパンはイエス様ご自身を表していたのだ、とわかりました。 |
| |
| ●伝道 |
| イエス様の十字架と復活の出来事ののち、弟子達は福音を伝えはじめました。 |
|
| 手には、イエス様から手渡されたかごがあります。 |
| かごにはイエス様のいのちのパンが一杯入っています。 |
| イエス様からいただいたイエス様の命をみんなに分け与えようと、弟子達は |
| 人々の中に出ていきました。 |
|
| けれど弟子達は多くの迫害と行き詰まりを味わわなければなりませんでした。 |
|
| 「どうにもならない」「自分達はもうだめだ」と無力感に襲われます。 |
| 絶望し、くずおれそうになる時に、弟子達を支えたのは、あの日の出来事でし |
| た。 |
| |
| 「そうだ、イエス様がおられる」 |
| 自分達の可能性ではなく、イエス様の可能性を信じて、もう一度立ち上がるこ |
| とが出来たのです。 |
| |
| その様にして、この日イエス様がなさったしるしは、今日に至るまで、イエス様 |
| に従う人々を励まし支え続けています。 |
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| ●私達 |
| 私達もこの出来事によって支えられています。 |
|
| あの時と同じです。 |
| 恐ろしい出来事が起こり続けています。 |
| 闇に向かって進んでいると感じる世の中です。 |
| 人々の魂は飢え渇いています。 |
| たくさんの人達が救いを求めています。 |
|
| この現実の中で、私達はあまりにも小さい。 |
|
| けれどイエス様はもうパンを食べさせると決めておられるのです。 |
| もう十字架にかかってご自分を裂き、命を与えてくださっているのです。 |
| |
| イエス様は私達に問われます。 |
| 「この人たちに食べさせるには、どこでパンを買えばよいだろうか」 |
|
| 私達は |
| 「二百デナリオン分のパンでは足りないでしょう」 |
| 「こんなに大勢の人では、何の役にも立たないでしょう。」 |
| と言いますか。 |
| それとも、イエス様がパンをくださると信じますか。 |
|
| 私達はどこまで行っても |
| 『私達にはどうすることも出来ない。』 |
| 『これっぽっちでは何の役にも立たない。』 |
| と思ってしまう者です。 |
| そういう者ですから、神様はけさ、私達に、しるしを見せてくださったのです。 |
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| ●結語 |
| 私達が持っているかごには、イエス様がくださったパンがいっぱい入っている |
| ではありませんか。 |
| |
| 私達はかごを持って出かけていきます。 |
| |
| 私達には出来ません。 |
| でも、イエス様はお出来になります。 |
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