| <メッセージ> |
| ●アドベント |
| アドベント・待降節を迎えました。 |
| イエス様のお誕生を待ち望むこの時、私達に詩編130編が与えられました。 |
| この詩編は、まさに、主を待ち望む熱い思いを詠っているのです。 |
| 「130:6 わたしの魂は主を待ち望みます、見張りが朝を待つにもまして、見 |
| 張りが朝を待つにもまして。」 |
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| ●深い淵の底 |
| 詩人は今、深い淵の底に居ます。 |
| 何が起こったのかは、定かではありません。 |
| 彼の身に恐ろしい出来事が起こったのかもしれません。 |
| 戦争が起こり、民族全体が苦しみのどん底に突き落とされているのかもしれ |
| ません。 |
| 国が敗れて、よその国に連れて行かれているのかもしれません。 |
| 何が起こったかは分かりませんが、自分の力や努力ではどうすることも出来 |
| ない状態になっているということは分かります。 |
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| ●打ちのめされて |
| 彼は、終わりが見えない暗闇の中に倒れ伏しています。 |
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| 『どうしてこんなことになってしまったのか。 |
| あの人達のせいだ。 |
| あの時、ああしていればこんな苦しみに遭わないで済んだのに。 |
| わたしは誠実に正しく生きて来たのに、どうしてこんな目に遭わなければな |
| らないのか。』 |
| 頭の中でぐるぐると思い巡らせば思い巡らすほど、心が苦しくなっていきます。 |
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| 苦しみから逃れる手立てを幾つも試みてみました。 |
| でも、どうすることも出来なかったのです。 |
| 彼は、疲れ果て深い淵の底に倒れ伏しています。 |
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| ●神様に向かう |
| けれど神様は彼を見捨てられませんでした。 |
| 神様に向かうようにと、導かれたのです。 |
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| 彼は神様を呼ぶことを始めました。 |
| 神様に向かって訴えます。 |
| 「130:2 主よ、この声を聞き取ってください。嘆き祈るわたしの声に耳を |
| 傾けてください。」 |
| 自分の中でぐるぐると思い巡らしていたことを、神様にぶつけました。 |
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| ●罪に気付く |
| 神様に訴え嘆くうちに、彼は、この苦しみを産み出したのは神様を無視し |
| て生きて来たためなのだと、気付きました。 |
| これまで彼は、自分は正しく生きていると思っていたのです。 |
| けれど神様を忘れていました。 |
| 自分の思いの中で、すべてを運んでいたのです。 |
| 『わたしは、神様の道を外れて自分勝手に生きていた。』 |
| 神様に背く罪を犯していたことに気付きました。 |
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| 彼はまっすぐに神様に向かいます。 |
| 「130:3 主よ、あなたが罪をすべて心に留められるなら、主よ、誰が耐え |
| えましょう。」 |
| そうなのです。 |
| 神様の正しさの前で、どうして自分は正しいと言うことが出来るでしょうか。 |
| 自分は正しいと思っていても、人の目には正しい人だと映っていても、神 |
| 様にはわたしのすべてが見えているのです。 |
| 神様がわたしのすべての罪を心にとめて裁かれるゆえに、わたしは今深い |
| 淵の底に居るのだ、と分かりました。 |
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| ●神の赦しを乞う |
| 彼はただただ神様の赦しを乞い願います。 |
| そして神様は赦すことがお出来になる方なのだと、分かりました。 |
| 彼は言います。 |
| 「赦しはあなたのもとにあり、人はあなたを畏れ敬うのです。」 |
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| ●赦し |
| 日本語には「ゆるす」という漢字が2つあります。 |
| 一つは「許す」、許可する時に使います。 |
| 権限のある者が「許可する」のです。 |
| もう一つはここにも使われている「赦す」です。 |
| この「赦す」ことが出来るのは、自分がその人から被害を受けた人だけです。 |
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| けれど「赦す」ことは何と難しい事でしょうか。 |
| 自分は赦した、と言える人は、おそらく相手から受けた被害がそれほど大 |
| きくなかったからでしょう。 |
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| 人は神様に対して大きな罪を犯し続けたのです。 |
| 神様の愛を拒みました。 |
| 神様を裏切りました。 |
| 神様なんか居ないと言って、自分が神様の場所に座り込んでいるのです。 |
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| 人が神様に対して犯した罪は、神様だけが赦すことがお出来になります。 |
| 詩人は、神様の赦しに望みをおきました。 |
| 神様の赦しの宣言を待ち望みます。 |
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| ●主に望みをおく |
| もう彼は倒れうずくまってはいません。 |
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| 深い淵の底に居ることに変わりはありません。 |
| でも、彼は頭を上げています。 |
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| 主を仰ぎ見ています。 |
| 「130:5 わたしは主に望みをおき、わたしの魂は望みをおき、御言葉を待ち |
| 望みます。 |
| 130:6 わたしの魂は主を待ち望みます、見張りが朝を待つにもまして、見 |
| 張りが朝を待つにもまして。」 |
| 町を囲む城壁の上で、見張役は一晩中、襲ってくる者がいないかと闇に目 |
| を凝らしています。 |
| 『早く朝が来ないか』と思っています。 |
| 明けない夜はありません。 |
| 見張りは必ず来る朝を、待って、待っているのです。 |
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| そのように詩人は、主を待ち望みます。 |
| 必ず来てくださる主を待ち望みます。 |
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| 真っ暗な淵の底から見上げると、上の方がほんのりと明るくなっています。 |
| 彼は希望を持って立ち上がりました。 |
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| そして、人々に呼びかけます。 |
| 「130:7 イスラエルよ、主を待ち望め。」 |
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| ●贖い |
| 彼は言います。 |
| 「慈しみは主のもとに、豊かな贖いも主のもとに。 |
| 主は、イスラエルを、すべての罪から贖ってくださる。」 |
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| 主なる神様は慈しみ深いお方であることが確かに分かりました。 |
| 人間同士ならば到底赦せない罪を神様に対して犯しているのに、ご自身で |
| その罪を贖ってくださるのです。 |
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| 「贖う」とは、その人の罪を引き受けて、身代金を払うことです。 |
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| 主なる神様は私達を慈しんでくださるお方だから、主を待ち望もう。 |
| 主は私達をすべての罪から贖ってくださるくださるから、主を待ち望もう |
| と、詩人は呼びかけます。 |
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| やがて、主がすべての罪から贖ってくださる時が来るのです。 |
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| ●キリストの誕生 |
| 旧約の時代の人々が待ち望んでいた救いが、実現しました。 |
| イエス・キリストの誕生。 |
| キリストがすべての人の罪を代わって負って十字架で死なれ、すべての人々 |
| に「赦し」を与えてくださるのです。 |
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| ●ヨセフ |
| 「イエス・キリストの誕生の次第は次のようであった。」 |
| と、マタイによる福音書は書き記しています。 |
| 先ほど交読文で読みました。 |
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| ヨセフもまた、深い淵の底に突き落とされた人です。 |
| 彼はその時、幸せの絶頂にいました。 |
| マリアと婚約したからです。 |
| ところが、二人が一緒になる前に、マリアが身ごもったのです。 |
| ヨセフの子でないことは、自分のことですから、明白です。 |
| 彼は苦しみ悩み、どうすれば良いのかと、眠れぬ夜を過ごしました。 |
| 彼は正しい人であったので、マリアのことを表ざたにするのを望まず、ひ |
| そかに縁を切ろうと、ついに決心したのでした。 |
| このように考えていると、主の天使が夢に現れて言ったのです。 |
| 「ダビデの子ヨセフ、恐れず妻マリアを迎え入れなさい。マリアの胎の子 |
| は聖霊によって宿ったのである。 |
| マリアは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の |
| 民を罪から救うからである。」 |
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| このすべてのことが起こったのは、主が預言者を通して言われていたこと |
| が実現するためであった、と説明されています。 |
| その預言は「見よ、おとめが身ごもって男の子を産む。その名はインマヌ |
| エルと呼ばれる。」というものです。 |
|
| インマヌエルとは「神は我々と共におられる」という意味です。 |
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| ●インマヌエル預言 |
| この預言は、イエス様誕生より700年も前に与えられた預言です。 |
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| この時も、人々は深い淵の底に居ました。 |
| この頃、国は北のイスラエル国と南のユダ国に別れていました。 |
| イスラエルがアラム(今のシリア)と同盟を結んでユダの首都エルサレム |
| に攻め上ってきていました。 |
| アラムがイスラエルと同盟したという知らせが伝えられ、王の心も民の心 |
| も、森の木々が風に揺れ動くように動揺していました。 |
| この時にイザヤによって告げられた預言が、インマヌエル預言です。 |
| 「落ち着いて、静かにしていなさい。恐れることはない。 |
| ・・・ |
| それは実現せず、成就しない。 |
| ・・・ |
| それゆえ、わたしの主が御自ら、あなたたちにしるしを与えられる。見よ、 |
| おとめが身ごもって、男の子を産み、その名をインマヌエルと呼ぶ。」 |
| イザヤ書7章です。 |
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| ●イエス様の誕生 |
| ヨセフは眠りから覚めると、主の天使が命じたとおり、マリアを迎え入れ、 |
| 生まれた子をイエスと名付けました。 |
| 「イエス」は、自分の民を罪から救う、という意味の名前です。 |
| 旧約の時代の人達が、長い長い間待ち望んでいた救い主が、ついにこの世 |
| に来られたのでした。 |
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| ●救いは実現した |
| 私達は今、主を待ち望んでアドベントの時を過ごします。 |
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| 私達はまだ来ない救い主を待ち望んでいるのではありません。 |
| 救い主イエス・キリストは来られました。 |
| 救いはすでに実現しています。 |
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| ●私達も叫ぶ |
| それでも私達には深い淵の底に突き落とされる出来事が起こるのです。 |
| 仕事や学校のこと、 |
| 人間関係、 |
| 病気、肉体の衰え、 |
| そして死。 |
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| どうもがいてもあがいても、そこから出ることが出来ないのです。 |
| もうどうすることも出来ないのです。 |
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| 深い淵の底から、私達も主を呼びます。 |
| 「130:2 主よ、この声を聞き取ってください。嘆き祈るわたしの声に耳を |
| 傾けてください。」 |
| と叫びます。 |
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| ●主はそばにおられる |
| でも、私達は、まだ来ないお方に向かって叫ぶのではありません。 |
| 遠く天に向かって叫ぶのではありません。 |
| 私達のところに来てくださっている主に叫ぶのです。 |
| インマヌエルの主、わたしと共におられる主に叫ぶのです。 |
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| 私達の望みは、イエス・キリストにあります。 |
| 私達も詠います。 |
| 「わたしは主に望みをおき、わたしの魂は望みをおき、御言葉を待ち望み |
| ます。 |
| わたしの魂は主を待ち望みます、見張りが朝を待つにもまして、見張りが |
| 朝を待つにもまして。」 |
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| 私達の救い主キリストは、すぐに深い淵の底に来てくださいます。 |
| 手を取り、抱きかかえて、深い淵から救い出してくださるのです。 |
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| 私達は、慈しみは主のもとにあることを、豊かな贖いも主のもとにあるこ |
| とを身をもって味わい知りました。 |
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| ●結語 |
| アドベントを迎えたこの朝、私達も主をほめ歌いましょう。 |
| 「主は、すべての人々を、すべての罪から贖ってくださる。」 |
|
| 神様の救いを感謝します。 |
| イエス様、ありがとうございます。 |
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